ムハンマドの奇跡 (パート3/3)
預言者によって行なわれた多くの奇跡は、スンナ(預言者にまつわる言行、承認、または叙述)によって伝えられています。
木の幹
ムハンマドはマディーナにおいて、木の幹にもたれかかって教えを説くことを習慣としていました。信仰者の数が増えて来ると、ある者が説教壇の設立を提案しました。預言者は説教壇が設けられると木の幹で説教をしなくなりました。教友の1人であるアブドッラー・ブン・ウマルが次のような目撃証言をしています。木の幹が咽び泣いたので、慈悲深き預言者はそれを手でなぐさめたのです。1
この出来事は信頼の置ける学者たちによる、途切れることのない目撃証言(ハディース・ムタワーティル)によって確証されています。2
溢れ出す水
数回に渡って起きたこととして、人々が渇きに苦しんでいた時、預言者による祝福が彼らを救ったことが挙げられます。ムハンマドがマッカからマディーナへと移住した6年 目に、彼はマッカへの巡礼を行ないました。砂漠での長い旅路で人々は完全に飲料水を切らしてしまい、ただ一つ残ったものは預言者の持っていた容器でした が、それも彼は礼拝の清めのために使い果たしてしまいました。しかし彼がその容器に手を置くと、彼の指の間から水が溢れ出て来たのです。その奇跡を目撃し たジャービル・ブン・アブドッラーは、その場にいた1,500人が「それを飲み、清めを行ないました。」3と述べています。この奇跡は信頼の置ける学者たちによる、途切れることのない連続的な伝承経路(ハディース・ムタワーティル)をもって伝えられています。
人間の指からほとばしる水というのは、石から水が創り出されたモーゼによる奇跡とも似しています。
食物の祝福
祈ったり、またはそれに触れたりすることにより、預言者が食物に祝福を与え、その場にいた全員が満足するまで食べられるようにしたことも複数伝えられています。これは飲食の貯蔵が尽き、ムスリムたちに苦難が訪れた時に起きています。5これらの奇跡は大勢の人々の目の前で起きており、否定することは不可能なのです。
病人の治癒
アブドッラー・ブン・アティークが脚を骨折した際、ムハンマドはその上から手をさすって治癒した。アブドッラーは、まったく何もなかったかのように元通りになった、と言った。この奇跡を目撃したのはバラーア・ブン・アズィブという別の教友だった。(サヒーフ・ブハーリー)
またハイバル遠征の際、ムハンマドは軍隊の前で、目を患っていたアリー・ブン・アビー・ターリブのを治癒しました。アリーはその後、四代目カリフになった人物です。6
魔除け
ムハンマドは、母親に連れて来られた男児の魔除けをしました。その際「出よ!私はムハンマド。神の使徒である!」と言って悪魔を追い払いました。その母親は言いました。「真実をもってあなたを遣わされた御方にかけて。私たちはその後、男の子から全く何の問題も見出しませんでした。」7
答えられた祈り
(1) ムハンマドに近い教友であるアブー・フライラの母は、イスラームとその預言者を中傷していました。ある日アブー・フライラは泣きながらムハンマドを訪れ、 彼の母親が救われるように祈ってくれるよう彼に頼みました。そしてムハンマドが祈り、アブー・フライラが帰宅すると、彼女は改宗の準備が出来ていたので す。彼女は息子の前で信仰宣言をし、イスラームに改宗しました。8
(2) ジャリール・ブン・アブドッラーは、神以外を崇拝する偶像崇拝者たちの土地を駆逐するよう、預言者による命を受けましたが、彼はうまく乗馬が出来ないこと を彼に訴えました。預言者は彼のために次のように祈りました。「神よ、彼を強靭な乗り手とし、導く者、かつ導かれた者にして下さい。」ジャリールはその 後、決して落馬することがなくなったと証言しています。9
(3)ムハンマドの時代、人々は飢饉に襲われていました。ムハンマドが金曜日の説教をしていた時、ある男が立ち上がってこう言いました。「神の使徒よ、私たちの富は破壊され、子供たちは飢えています。私たちのために神へお祈り下さい。」ムハンマドは両手を掲げて祈りました。
その場に居合わせた人々は、彼が祈り終えて両手をおろした途端、雲がまるで山々のように形成されていったことを証言したのです。
彼が説教壇から降りる頃には、彼の髭から雨が滴るほどでした!
雨は次の金曜日までの一週間、降り続けたのです!
同じ男がまた立ち上がり、今度はこのように言いました。「神の使徒よ、私たちの建物は崩壊し、家畜も溺れ死にました。私たちのために神へお祈りください!」
ムハンマドは両手を掲げて祈りました。「神よ、我々の上でなく、我々の周りに(雨を降らせて下さい)。」
すると彼の指し示した方向に雲が退き、マディーナの上空を除く町の周りのみを雲が囲んだということが、その場にいた者たちによって証言されているのです!10
(4) また、ジャービルに関する美しい逸話があります。ある時、彼の乗っていた水を運ぶラクダが疲弊し動けなくなりました。ムハンマドは彼に尋ねました。「あな たのラクダはどうしたのですか?」ラクダが疲弊していることを知ったムハンマドがその哀れなラクダのために祈ると、ラクダはそれ以降、常に先頭を行くよう になったとジャービルは報告しています。ムハンマドはジャービルに尋ねました。「あなたのラクダの調子はどうですか?」ジャービルは答えました。「快調で す。あなたの祝福がラクダに届いたのです!」ムハンマドはその場でジャービルから金と引き換えにそのラクダを買い取りました。条件としてはジャービルがそ れに乗って町に帰り付いた後というものでした。マディーナに戻ったジャービルは翌朝ムハンマドにラクダを届けにいきました。ムハンマドは彼に金を支払った 後、彼がラクダを取っておくよう言ったのです!11
大勢の前で偉大なる奇跡を目撃したことによって、彼の周囲の人々が彼の誠実さを確信していたことはごく自然なことだったのです。
Footnotes:
1サヒーフ・ブハーリー
2 木の幹が咽び泣いたという事件は10人以上に渡る預言者の教友たちがこの報告を伝えています。ハディース大学者たちによる次の著作をご参考ください:アッ=スユーティー著‘Azhar al-Mutanathira fi al-Ahadith al-Mutawatira’ 267頁、アル=カッターニー著‘Nadhm al-Mutanathira min al-Hadith al-Mutawatir’ 209頁、イブン・カスィール著‘Shamail’ 239頁。
3サヒーフ・ブハーリー
5サヒーフ・ブハーリー。参考:アル=カッターニー著 ‘Nadhm al-Mutanathira min al-Hadith al-Mutawatir’213頁、カーディー・イヤード著 ‘al-Shifa’ 419頁。
6サヒーフ・ブハーリー、サヒーフ・ムスリム
7イマーム・アハマドによるムスナド、およびシャルフ・アッ=スンナ。
8サヒーフ・ムスリム
9サヒーフ・ムスリム
10サヒーフ・ブハーリー、サヒーフ・ムスリム
11サヒーフ・ブハーリー、サヒーフ・ムスリム